言語AI研究センター兼任 東北大学大学院生命科学研究科 脳機能発達分野 安部健太郎教授の研究成果について 10月10日プレスリリースがございました
【概要】
うつ病は世界的に深刻な精神疾患であり、その発症メカニズムや治療薬の作用機序には未解明な部分が多く残されています。現在、セロトニン仮説(注2)に基づいて開発された抗うつ薬は治療法として効果を挙げていますが、効果の発現に時間がかかることや、薬剤による効果の個人差が大きいことが課題です。
東北大学大学院生命科学研究科の山本創大学院生(研究当時)、安部健太郎教授らは、マウスの脳内の神経細胞が内在に発現する多数の転写因子の活性を測定する独自開発技術「転写因子活性プロファイル法」(注3)を確立しています。
この技術でうつ病モデルとして知られる慢性社会的敗北ストレスモデルのマウスを解析し、抑うつ状態に関連して活性変化を示す転写因子を探索しました。
その結果、転写因子群 Tcf/Lef1 または Rest の活性上昇が観察され、これら転写因子を薬剤で活性化すると抑うつ状態の改善が促進されることから、これらが抑うつ状態からの回復に寄与することが明らかになりました。
本研究は、うつ病病理と抗うつ薬の作用に関する新たなメカニズムを示唆するものであり、今後の抗うつ薬開発に新たな視点を与えるものです。
本研究成果は 10 月 7 日に米国神経精神薬理学会が発行する学術誌、Neuropsychopharmacology (電子版)で公開されました。
【論文情報】
タイトル:Transcription factors Lef1 and Rest stimulate recovery from depressive states
著者: Hajime Yamamoto, Satomi Araki, Ryoma Onodera, Yasuhiro Go,Kentaro Abe*
*責任著者:東北大学大学院生命科学研究科 脳機能発達分野 教授 安部健太郎
掲載誌:Neuropsychopharmacology
DOI: 10.1038/s41386-025-02259-0
URL: https://www.nature.com/articles/s41386-025-02259-0